「暮らしに役立つ法律情報」は、過去に配信していたメールマガジンの内容です。
最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。
私たち弁護士は、毎日たくさんの方々からの
法律相談を受け付けています。ご相談に来られる方の年齢層は
じつに幅広いのですが、最近は高齢者の方が増えています。
やはり、高齢者の方からのご相談内容は、
遺産相続や財産管理、成年後見制度といった老後への備え、
いわゆる「老い支度」についての内容が多くなっています。
高齢化社会が進む日本では、今後ますます、それらのご相談が
増えてくるのは明らかで、当事務所でも高齢者の皆さんの
お悩みごとを解決できるよう、サービスの充実を目指しています。
その一環として、介護施設等での出張相談会を
開催するなどしているのですが、実際にたくさんの高齢者の方々が
生活しておられる場所を尋ね、お話をお伺いすると、
色々なお困りごとや問題点が見えてきます。
事務所でご相談を受けたり、執務をしたりしているだけでは
分からないこと、見えてこないことがまだまだ多いと実感でき、
訪問の度に勉強の機会を与えていただいています。
そこで今回からはしばらく、介護施設に関するお話しを
させていただきます。
皆さんは「特養(とくよう)」という言葉をご存知でしょうか。
特養とは、「特別養護老人ホーム」のことを指す言葉です。
特養は「介護付き有料老人ホーム」に比べて費用がかからない
こともあり、入居を希望される方が非常に多くなっています。
特養への入居希望者の数は尋常ではなく、2010年には日本全国で
約42万人もの高齢者の方が、入居待ちになっているのです。
ところが、実際の特養の入居者数は約40万人ということです。
現状で40万人しか入居できていないにも関わらず、
入居者を超える42万人が入居待ちになっているというのは、
非常に大きな問題であることがお分かりいただけると思います。
このような言い方は問題があるかもしれませんが、
どなたかが亡くならない限り、次の方は入居できないという
非常に厳しい状況にあるのです。
「入居待ち」という状態であれば、とりあえず順番を待っていれば
良いというふうに思われがちですが、特養の場合はそうではありません。
施設に入居する必要性が高いと判断された方から入居することになるため、
入居の意思表示をして、長期間にわたって入居待ちになっているにも
関わらず、状態が悪くならない限り、後回しにされてしまうのです。
たまたま運が良く、数ヶ月程度で入居が認められる方も
いらっしゃるようですが、入居待ちの間に亡くなってしまう方も
いらっしゃるのです。では、特養に入居できるまでは
どうするかということですが、療養型の病院に入院するか、
デイサービスなどを利用して、頑張ってご自宅でお過ごしになるか
といったところになります。
ここまでのお話でお分かりになると思いますが、
特養に限らず、介護が必要になった場合の施設への入居は、
お体の状態が思わしくなくなったときに考え始めるでは、
とても間に合わないということです。
「今は元気いっぱいだから、そんなことは考えなくても良い」
という方が大半かと思いますが、元気いっぱいの今から、
万が一のための備えを万全にされておかれることをおすすめします。
介護施設への入居の検討は「まだまだ早い」と思っているくらいが
ちょうど良く、できるだけ早く入居の検討を始め、
入居手続きまでを済ませておかれるほうが、安心して毎日を過ごし、
確実な老い支度に取り組むことができるのです。