「暮らしに役立つ法律情報」は、過去に配信していたメールマガジンの内容です。
最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。
前回に引き続き、人生を振り返るために、そして、相続を円滑に
進めるために有効な「エンディングノート」のお話です。
エンディングノートには、自分の葬儀に関する希望や、
残された家族・親族へ残しておきたい感謝の言葉、自分の財産についてなど、
さまざまな事柄を記入しておくことができます。
エンディングノートに用意されている項目だけでも
相当なボリュームになるのですが、その他にも、書き記しておくと良い
事柄がいくつかあります。
たとえば、「病気が進行してしまった際は、過剰な治療は必要ない
(またはその逆)」といったことを書いておくと良いかもしれません。
そういった意思表示に関しては、法的な定めはありませんから、
エンディングノートにしっかりとしたためておくと良いでしょう。
臓器提供の意思についても、エンディングノートに書くことができます。
人工呼吸器を付けなければならなくなった場合、その後の治療について、
あるいは、死後のことについて、自分の意思を伝えることは困難です。
そこで、事前にエンディングノートをしたためておいて、
家族に渡しておくというのは有効かと思います。
そうすることで周りの人々も、「本人がこう言っているのだから...」
ということで、治療継続の是非についての判断を下しやすくなり、
残された家族や親族を助けることにも繋がります。
また、認知症になった場合について、自分の希望を書き記しておくのも
良いでしょう。認知症になった際に「自分の名前をどのように呼んで
欲しいのか?」といった、細かいことを書いておくのも一つの手です。
「おばあちゃん」と呼ばれるより、自分の名前をきちんと呼んで欲しい
といった意思表示をしておくこともできるのです。
エンディングノートは、遺言書と同じで、家族に見つけてもらう
必要があります。ですから、置き場所については分かりやすい場所に
置いておくか、家族に伝えておかなければなりません。
お葬式が終わってから、部屋の整理をしている最中に出てきた...
ということであれば、せっかくお葬式の希望を書いていても、
意味がなくなってしまいます。見つけられたご家族がショックを
受けてしまうかもしれません。生前に見られては少々恥ずかしいかも
しれませんが、在処は伝えておくようにしましょう。
前回もお話ししました通り、エンディングノートには、
遺言書のような法的な効力がありません。それでも、故人の意思、
想いを確実に伝えてくれるものとして、大きな役割を果たします。
相続でもめるのは、やはり遺産の取り分についてですが、
エンディングノートに、誰にいくらとしている根拠は...といったように、
遺言書には書けなかった想いを、丁寧にしたためておくと、
無駄な争いを防ぐことができるかもしれません。
遺言書には必要最低限のことを記しておき、エンディングノートに、
遺言書の内容について詳しく補足してあげると良いでしょう。
自分の生き方を振り返りながら、そして、未来を見据えながら、
エンディングノートをしたためてみてはいかがでしょうか。
人生は、いつ終わりがやってくるか分かりません。
「備えあれば、憂いなし」なのです。
弁護士として、遺産相続などのご相談をお受けする立場から、
相続で「もめない」ための遺言書を上手に作成することに
主眼を置いたエンディングノートを監修しました。詳しくは下記から...
▼澤田有紀監修「相続でもめないための遺言書」(主婦の友社)
http://www.miolaw.jp/books/yuigon.html
次回も、暮らしに役立つ身近な法律の話題をお届けします。