「暮らしに役立つ法律情報」は、過去に配信していたメールマガジンの内容です。
最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。
前回に引き続いて、高齢者の財産を守る仕組みである、
「成年後見制度」についてお話しを進めていきます。
体が不自由になったり、判断能力が低下してきた親族などの
後見人になるつもりで、成年後見人の申し立てをした場合ですが、
家庭裁判所から財産の相続人となる可能性のある方(推定相続人)
に対して通知が届きます。
その通知の内容は、
「○○さんが△△さんの後見人になりたいという申し立てがあり、
後見人候補者となっていますが、異議はあるでしょうか?」
といったものです。
それが仲の良い家族の場合ですと問題はないのですが、
そうでない場合「あの人ではダメだ」「自分が後見人になるほうが良い」
などと、争いの火種になることも考えられます。
通知を受け取った人の誰か一人でも異議を唱えた場合、
裁判所としては「全員の同意が得られていない」として、
後見人に相応しくないという判断を下すことになります。
また、もともと親族がいないとうケースの場合は、
検察官や市町村長から申し立てが行われます。その場合、
家庭裁判所の名簿に記載されている後見人候補者の中から
後見人が選ばれます。家庭裁判所の名簿に記載されている
後見人候補者は、弁護士や司法書士といった人たちです。
弁護士や司法書士に後見人を依頼するという場合、
法律の専門家ですから、とても信頼ができそうです。
しかし、専門家に依頼する場合には、ボランティアでも無い限り、
毎月の費用を支払う必要性が出て来ることになります。
それだけの費用をかけてでも、専門家に依頼するほうが良い
というケースもあれば、何もしなくても良いケースももちろんあります。
それでは、第三者に依頼するほうが良いのは、どんな場合でしょうか。
たとえば、親族間で争いが予想される場合や
よく分からないままに商品を購入させられて被害に遭っている、
といった場合です。
将来的に物事の判断に支障が出るようになったり
した場合に備えて、予め準備をしておくのも一つの手です。
自分の財産を管理してもらったり、希望する施設に入居させて
もらったりといったことを可能にするために、事前の契約によって、
誰を後見人にするか決めておくこともできます。
このような制度を「任意後見制度」といいます。
この任意後見制度を利用する際には「公正証書」で
契約内容を決定しておく必要があります。
口約束や自作の書類などでは認められません。
任意後見制度は、事前に契約を結んでおいて、
判断能力が低下してきたなと感じてきた時点で、
本人や任意後見人の申し立てによって、契約内容に基づいて、
家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
家庭裁判所は、任意後見監督人を選任するだけではありません。
後見人に選ばれた人が、勝手に財産を使い込んだりする
といったことがないように、監督することも家庭裁判所の役割です。
たとえば、不動産を売却したといった場合は、
売却代金がいくらで、その使途は何であるかといったことも
報告しなければなりません。もちろん、毎月の生活費が
いくらかかったかといったことも報告します。
家庭裁判所がしっかりと監督してくれるというのも、
この制度を利用する大きなメリットの一つといえるでしょう。