弁護士の時事解説
【建設アスベスト給付金制度】が始まっています
今年(令和4年)の1月19日に完全施行された「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」により、アスベスト(石綿)にさらされる建設業務に従事されていた方に対し、一定の要件を満たす場合、給付金が支給されることになりました。
給付金制度ができた経緯
アスベスト(石綿)にさらされる事業所や工場で働いたり、出入りしていた方々への国による損害賠償の制度は、平成26年10月9日のいわゆる「泉南アスベスト(石綿)訴訟」の最高裁判決をもとに、既に運用されています。
加えて、令和3年5月17日、アスベスト(石綿)にさらされる建設業務に従事していた元労働者やそのご遺族の方が、国やアスベスト(石綿)含有建材メーカーに対して損害賠償を請求した訴訟(いわゆる「建設アスベスト訴訟」)において、最高裁は、国の責任を認める判決を言い渡しました。
これを受けて、同年6月9日、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、令和4年1月19日に完全施行されるに至りました。
支給対象となる方は
① 昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に、一定の屋内作業場で建設業務に従事していた労働者や一人親方・中小事業主(家事従事者等を含む)またはそのご遺族の方
*吹付作業の場合は昭和47年10月1日から昭和50年9月30日まで
② ①の結果、石綿肺、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水といった石綿関連疾病を発症した方、またはそのご遺族の方
*請求できるご遺族には順序があります
給付金の額
①石綿肺:550万円~1,150万円
②中皮腫・肺がん・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水:1,150万円
③死亡された方:1,200万円~1,300万円
*石綿にさらされる建設業務に従事した期間が短い方や、肺がんで喫煙習慣のあった方については、給付金額が1割減額されます。
請求期限があります
給付金については、石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日又は石綿肺に係るじん肺管理区分の決定があった日(石綿関連疾病により死亡したときは、死亡日)から20年以内に請求をする必要があります。期限を過ぎると請求できなくなりますので注意が必要です。