弁護士の時事解説
相続手続の際に便利な 法定相続情報証明制度
相続手続きで一番多いのは、預金口座の払い戻しです。相続人の戸籍の収集に苦労した経験がある方も多いのではないでしょうか。
相続手続の中で 一番多いのは、金融機関での預金口座の解約・払戻しですが、遺言書が無いと、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍謄本と、相続人の関係がわかる戸籍謄本一式が必要になります。
戸籍謄本の収集は、相続人が配偶者とお子さまだけの場合は比較的容易にできますが、お子さまがおらず、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合や、相続関係が複雑な場合は、相続人の本籍地の役所に問い合わせて順番に戸籍を辿って取り寄せるため、時間と費用がかかります。
そうして、やっと集めた戸籍謄本一式を金融機関の窓口に提出しても、今度は金融機関で戸籍の確認作業にかなりの時間を要し、ようやく1つの金融機関で手続きが済んだと思っても、次にまた別の金融機関に戸籍謄本一式を提出して、同じように一から手続しなければなりません。
複数の異なる金融機関に預金口座がある場合だけでなく、不動産の相続登記や生命保険の請求、有価証券の名義変更手続きなども行う場合は、ひと通り相続手続きが終わるまでに数か月かかったということがよくあります。そして、複数の相続手続を同時に進めようとすると、戸籍謄本一式を何セットも準備しなければならず、費用がかさみます。
このような、相続人や手続担当部署の負担軽減を目的に、平成29年5月から、全国の登記所(法務局)において、「法定相続情報証明制度」がスタートしました。この制度を利用すると、法務局に法定相続人であることの証明書が発行されますので、種相続手続をするたびに戸籍謄本一式を何度も提出する必要はありません。
手順としては、被相続人と相続人全員の戸籍謄本と、相続関係の一覧表(法定相続情報一覧図)を提出すると、法定相続人であることを証明する、「法定相続情報証明」 が無料で発行されます。相続手続きをする際に、あらかじめ手続に必要な枚数を取得しておけば、複数の相続手続を同時に進めることが可能になり、時間と費用を節約できて、大変便利になりました。
さらに、 相続関係が複雑な場合も、法務局が戸籍謄本の中身を細かくチェックして、法定相続情報に間違いがないことを確認しますので、後になって「相続人が漏れていた!」 といった不測の事態を未然に防ぐことができます。
法務局での手続きは複雑で面倒だと思われるかもしれませんが、最初にこの手続をすることで、煩わしいやり取りから解放されて、相続手続きにかかる時間と費用を節約できるうえに、結果として、安心して確実に相続手続をすることができます。
この制度はスタート以来多くの方が利用されており、相続税の申告書への添付や、遺族年金の手続きの添付資料など、利用範囲も順次拡大されています。
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